大切な人が綴っていた小説や随筆、描き続けていた絵画、撮りためていた写真…。想い出がたくさん詰まったいとおしい数々を、遺稿集や遺作品集という形にして甦らせてみませんか。
ある人は、伴侶を亡くされて3ヵ月ほどした頃、どうすることもできない寂寥感におそわれました。何も手につかず、その人が着ていた服や書いていたものに触れては、涙する日々―。そんなとき、ふと故人がノートに綴っていた川柳を見つけました。何かすることが欲しくて、読みながらそれをワープロに打ち込んでみると、いつの間にか数時間が経ち、とても穏やかな満ち足りた気持ちになったそうです。
その方はその後、入力した川柳を故人の遺稿集として一冊にまとめました。
「入力したり、読み直したりしているときは、思わずぷっと吹き出したりして、次第に自分が元気になっていくのがわかりました。きっと彼が悲しんでいる情けない私を見て、励ますためにつくらせたんでしょうね」
大切な人を亡くした悲しみは、いつまでも薄らぐことはありません。
そしてその人の温もりが感じられるものは、かけがえのない宝です。
宝に触れていると少しずつ心が癒やされ、悲しみが温かくなっていきます。
遺稿集、遺作品集は、故人のためであるのはもちろん、生きている人のためでもあると思います。