最近手掛けた本の著者さんは、ちょっと不思議な文章の書き方をする方でした。
たとえば、
私は その日 調べものをするため 自転車で 近くの 図書館を 訪ねた
という文章があるとします。普通はこんな感じですよね。
ところがこの著者さんの場合、
その日 自転車で 調べものをするため 近くの 図書館を 私は 訪ねた
となります。
「え、自転車で調べもの?」
「図書館を私は?」
「あ、図書館を訪ねた、のね」
決して誇張ではありません。なぜかこういう文章なのです。
最後まで読めば内容は通じますし、文章として“間違い”ではないのですが、
ど~~も読みづらく、違和感があります。
試しにこの文章を5W1Hに当てはめると、
その日 自転車で 調べものをするため 近くの 図書館を 私は 訪ねた
when how why where what who
全部きちんと入っています。ある意味、完璧です。
すべての文章がそうというわけではないのですが、かなりの量がこんな具合です。
編集・校正する立場としては、「赤」(正確には「エンピツ」です。同業者ならおわかりかと)
を入れようかどうしようか、悩んでしまいました。
「内容的には間違っていないからこのままにしようか」
「いや、やっぱり読みづらいのは直した方がいい」
「でも、この文体が著者さんの個性だとしたら…」
「い~や、それでも“自転車で調べもの”と読めてしまうのは避けたい」
という具合に葛藤があり、結局、この例のようにどうしてもおかしなところにはコメントを入れました。一文一文ごとにちゃんと文章が通じるかどうかハラハラしてしまい、ときにはイラッとしたりもして、妙に疲れた一冊でした。